相続不動産相談所「相続で信託登記が有用になるのはどんなケース?」|コラム|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2018.11.12

相続不動産相談所「相続で信託登記が有用になるのはどんなケース?」

相続不動産相談所「相続で信託登記が有用になるのはどんなケース?」
高齢で書類手続きが困難な際
信託登記で受託者が代行可能に


 宮城県内の不動産会社社長から「相続には信託が有効」というキーワードで興味深い事例を聞きました。高齢の地主さんが相続対策をする際、娘さんを受託者にして土地を信託登記したというお話です。具体的な事例から、高齢化社会の相続対策全般で気を付けなくてはいけない、ひとつのポイントも見えてきました。

金融機関からの借り入れが難航

 宮城県内のある地主さんは、92歳ということで、自らの資産について総合的に相続対策を行っていたそうです。その中で、国道沿いにある500坪の広さの土地について、収益性などを考えた上で、2棟のアパートを新築する計画を進めていました。
 更地にアパートを新築するという手法は、広く知られた相続対策のひとつです。そのままにしておくよりも、建物付きの土地のほうが相続税評価額が低くなりますし、さらに建物を新築する際に借り入れを行うことで、その分は負債額として評価額から控除されます。
 しかし、地主さんは頭脳は明瞭でしたが、アパート建設資金を金融機関から借り入れする際に必要になる、20枚近くの書類の準備作業が困難という状況でした。この書類の手続きは、どうしても土地所有者本人が行わなくてはいけないのです。成年後見人でも代行することはできません。
 地主さんの相談に乗って相続対策をサポートしていた不動産会社社長は、司法書士と何か良い方法がないかといろいろ調べた末に、その土地を、地主さんの娘さんを受託者とする信託登記するという方法を見つけました。

後見人よりも大きい裁量

 信託の受託者は成年後見人よりも裁量が大きく、管理を任されている財産の売買なども実行できる権限があります。この計画に必要な借り入れの際の書類記入の手続きを娘さんにしてもらうという算段をしたのです。
 この際、借り入れを申請しようとしていた金融機関から「前例がないことだから」と言われ、申請はすんなりとは進みませんでした。しかしながら、この件に関する金融機関側の担当者が融資部門の経験者だったことから、金融機関本部での打ち合わせ・調整の際に、担当者が金融機関と地主さんの双方の立場での調整役として尽力してくれたことも幸いし、約2か月かかったものの、無事に申請が通りました。
 書類上の手続きは、どうしても所有者の自筆が必要だった口座開設用の2、3枚の書類は地主さんが、それ以降の17、18枚の書類は受託者の娘さんが記入しました。
 その後アパートは無事に竣工・稼働し、翌月それを見届けたかのように地主さんは亡くなったそうです。
 この事例からも、相続対策の際には信託登記を活用することは非常に有効だということが分かります。それと同時に、打つべき先手は、なるべく早めにということも非常に重要であるということも分かります。
 高齢化が進み「人生100年時代」とも言われるようになりましたが、ひとりひとりが心身ともに健康でいられるかどうかはわかりません。所有者は心身の健康でなく、資産管理の際に必要な手続きができない状態だったとしても、その時に備えた対策が取られていなければ、所有者が生きている限り、誰も何もできなくなってしまうのです。お手持ちの不動産についてのご相談は、お近くの全国優良リフォーム会員まで。

情報提供:ランドマーク不動産(宮城県柴田郡)