購買心理学から見る日本経済とプロレス(第9回)ゲスト:スタン・ハンセン|対談|住生活を支える新聞株式会社のWebマガジン
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2020.10.05

購買心理学から見る日本経済とプロレス(第9回)ゲスト:スタン・ハンセン

購買心理学から見る日本経済とプロレス(第9回)ゲスト:スタン・ハンセン
第4話 プロとして、どう働くのか?どう生きるのか?

 取材には、スタン・ハンセンとその奥様が同席していた。40分くらいが過ぎたあたりからだろうか、奥様は夫の話を静かに見つめていた。そして夫人は、スタン・ハンセン氏に言った。

奥様 一つだけいいかしら?私からは言わないけれど、日本に来た人の多くがやがて去ったにもかかわらず、あなただけは会社に残った。そのときに(ジャイアント)馬場さんに言われたこともちゃんと話して。
スタン・ハンセン そうだね。そのことも後で話すと思うよ。
奥様 忘れないでね。
スタン・ハンセン OK。
奥様 後で彼がお話しします。

 終身雇用と言われた時代は昭和までだろうか。「会社の幸せ=個人の幸せ」とは限らない。また、「仕事がきつい会社=不幸な会社」とも限らないし、「在職期間の長い社員=愛社精神のある社員」とも限らない。
 海外から来る外国人にとっては、出稼ぎでの来日である。当然、金銭メリットが大きければ日本に来るし、メリットがなければ来ない。
 プロレスラーという職業は、どこかの団体に所属してはいるものの、実際にはほとんど自営業のようなものでもある。メリットがある団体のリングに立つのは、当然と言えば当然である。
 会社も、特に小さなうちは優秀な人材の入社もなければ、そうした人材と知り合うこともない。だから、外部から顧問を招いたり、コンサル会社に頼んだりする。助っ人外国人は、そういった意味では優秀なのかもしれない。しかし、実際にお客様の接客をするわけではない。
しょっちゅう担当者が変わる会社は、「さぞかし居心地が悪い会社なのだろう」とお客様に思われてしまう。だから「新しい担当者に私のことを詳しく話しても、どうせすぐに辞めてしまうだろう…」と思われてしまえば、人間関係も築けない。
 スタン・ハンセンの25年間は、信用と信頼に値する25年間である。はじめはまったく興味のなかったお客様でも、25年間も通えば、そのうち好意が生まれてくるものである。
 どんな会社でも、10年のうちに1度や2度は大きな波が来る。悪いときに社長が頼るのは、仕事のできる社員ではない。悪くなったときにすぐに辞めたりしない、裏切らない社員である。
 
-リング上では、すごく嫌われるようなパフォーマンスをしよう、本当の悪役に徹しようと考えてはいなかったのでしょうか?私は、「ラフファイトで酷いことをするな」と思いながら見ていたのですが、ハンセンさん自身は、ファンにどういうふうに見られたいと思って試合をしていたのでしょうか?

スタン・ハンセン 日本のファンに好かれたいと思ったことは一度きりともない。 私がやってることを好かれようが好かれまいが、そんなことはまったく関係ありませんでした。
私が日本人相手にレスリングしたら、人々にとって、どちらに付くかを決めるのは簡単なことですよね。私は悪者です。でも他の外国人レスラーと試合をするようになったときは、個性とキャラクターのおかげで人々は私に興味を持ってくれて、(私がヒールであるという)状況に反して、みんな私のことを好きになってくれました。

 プロとしての仕事を全うしたに過ぎない。プロとして与えられた仕事を全うしたに過ぎないということだろうか。
 確かに私の見たリングでの試合は、どれも手抜きをしているとようには見えなかった。プロとして一切手抜きのない試合ばかりであった。だからこそ魅せられ、そしてファンになったのである。

(次回に続く)